絵に興味がある人なら、デッサン、クロッキー、スケッチの違いはなんとなく分かるのかもしれませんが、どう違うのかを聞かれるとちょっと戸惑う方もいることいることでしょう。
また、模写やドローイングはどうでしょうか。聞いたことがあっても分からないという人もいるでしょう。
今回は、デッサン、クロッキー、スケッチ、模写、ドローイングの違いについて詳しくご紹介しましょう。
デッサンの語源はフランス語の「dessin」からきています。主に鉛筆や木炭などを用いて描くのでモノトーンになり、ほとんど彩色を使わない絵画表現になります。
日本語では「素描」 、英語では「ドローイング」(drawing)と呼ばれる描き方がデッサンにあたります。
デッサンとドローイングの解釈の違いは、デッサンが時間をかけてモチーフの特徴を細かく捉えて描くのに対し、ドローイングは型にはまらず自由な描写の傾向があり即興性も強いです。
・デッサン
<デッサンは彩色前の下絵として輪郭や質感、立体感などを捉える目的>
彩色前の下絵の場合は輪郭、質感、立体感などを大まかに捉える目的で描きます。あまり、細かく描きこみ過ぎると、絵の具などを塗るときの邪魔になることもあります。
どの程度の精密さで下絵を描くかは、個人差がある所でしょう。
<デッサンは時間をかけて正確に描かれる>
デザインだけでしっかり仕上げる場合は、時間をかけてモチーフを正確に描きます。そのときは下絵と違い細かい部分までしっかりと手を加えて仕上げていきます。
<デッサンは鉛筆や木炭、コンテなどで白い紙に描くことが一般的>
日本におけるデッサンといえば、鉛筆や木炭、コンテなどを使って白い紙に描くことが一般的です。中でも鉛筆は馴染みのある道具なので扱いやすく、デッサンに使われることが多いです。
<デッサンは写実的、再現的な描写、古典的な手法>
デッサンとは、一般的に写実的、再現的な描写、古典的な手法を用いておこないます。モチーフを描くときには、形や陰影だけでなく、表面の質感まで表現し、詳細に仕上げていきます。
また、複数の違うモチーフがあるがある場合は、素材や質感の違いをはっきりと描き分けることが大切です。
・ドローイング
<ドローイングは作者の内面的要素を表現する自由な描写である傾向>
日本でいうドローイングとは、正統的あるいは伝統的な描写ではなく、どちらかというと作者の内面的要素を平面上に表現する自由な描写である傾向にあります。
<ドローイングは即興性が強い>
ドローイングとは、イメージしたものなどを短時間で線画によって描き、即興性が強いもののことをいうことをいいます。
<子供の落書きもドローイング>
子供が紙や壁などに殴り書きしたものもドローイングにあたります。シンプルな線画で対象を描くことをいいます。
<スケッチやクロッキーとの違いは人によって解釈に違いがある>
スケッチは英語の「sketch」、日本語では「写生」のことをいい、クロッキーはフランス語の「croquis」、日本語では「速写」のことをいいます。
このように漢字で見るとなるほど!と理解しやすいですよね。
スケッチやクロッキーとの違いはプロの人でも解釈に違いがありますが、一般的にスケッチは、人物や風景などを大まかに捉え描写したもの、クロッキーは人物や動物など動きのある物を素早く簡素な線のみで表現したものです。
<「塗り」の要素が強いものはペインティング(painting)>
ドローイングの中でも、線で描くのではなく塗り込んでしまうものはペインティング(painting)として分類されるでしょう。
・語源は英語のsketch、日本語で「写生」
スケッチは、英語の「sketch」が語源となり、日本でいう「写生」にあたります。人物や風景などの描写がメインになるでしょう。
・性質は素描に近い
性質的には素描に近いもので、簡単に鉛筆などで位置や構図を決め描いていきます。モノトーンのままや水彩絵の具などで色を付けていく場合もあります。
・人物や風景などを大まかに描写すること
人物や風景などを細かい部分にとらわれないで、大まかに描写することをいいます。短時間でそのものの印象を捉え線で描いていきます。
<短時間で簡潔に描いたものをラフスケッチ>
スケッチの中でも短時間で簡潔に描いたものをラフスケッチと呼びます。一般的には鉛筆を使う人が多いですが、色鉛筆やパステルなどでラフスケッチをする人もいます。
・スケッチをもとに水彩や油彩の作品に仕上げることも
スケッチをおこなうときは主にモノトーンですが、絵の具などを用いて水彩や油彩の作品に仕上げるときはラフなスケッチであたりをつけ、色を塗ることに多くの時間を費やします。
・鉛筆でスケッチブックに描かれることが多いが道具に決まりはない
主に鉛筆を使ってスケッチブックに描くことが多いですが、道具に決まりはないので別の物を用いて描くこともスケッチにあたるでしょう。
<モノトーンだけでなく彩色されることもある>
鉛筆だけの場合はどうしてもモノトーンになりますが、その上から絵の具などで色をのせていくこともあるでしょう。
<水彩絵の具で描いた水彩スケッチなども>
スケッチをすることでモチーフの持っている印象をしっかりととらえてから、水彩絵の具を使った水彩スケッチなどで色を塗っていきます。
・語源はフランス語のcroquis、日本語で「速写」
クロッキーの語源はフランス語の「croquis」、日本語で「速写」のことをいいます。「速写」といわれるように素早く描くのがクロッキーです。
・人物や動物などの動きがあるものを簡潔に線だけで描くこと
クロッキーは、主に人物や動物などの動きがあるものを簡潔に線だけで描きます。絵を描くときにいらないものをそぎ落としてとてもシンプルに描いていきます。
・10分程度で素早く書かれる
クロッキーは、まさに瞬時にモチーフの形や動きを線でとらえ、紙に写し取るという描き方です。
例えば、人物のクロッキーなどの場合は、モデルさんがいろいろなポーズをしてくれますが、デッサンなどのように長時間かけて描くものではなく、5~10分程度の短時間で描き上げるものです。
・大まかに描写するという意味ではスケッチと同じ
クロッキーもモチーフを大まかに描写するという意味ではスケッチと同じです。
しかし、クロッキーの場合は、線を繋げて描くこともあり、細かい描写などは一切描きません。
・デッサンと同様に漫画の練習法に推奨される
クロッキーは、瞬時に物の特徴を捉える練習に適しています。これは、美術作品を描いていくのに必要不可欠なものです。そのため、デッサンと同様に漫画の練習法にも推奨されています。
・他人の作品や写真などを忠実に再現して描くこと
他人の作品や写真などをそのまま忠実に再現して描くことをいいます。いかにそのままそっくりに描くことができるかという描き方になります。つまり、自分のイメージや考えなどを一切入れないやり方ということになります。
古くから、日本画や仏画では、訓練や修行、技法の伝達などの目的で模写がおこなわれていました。
また、美大などでも授業の一環として模写が取り入れられています。
・模作ともいう
模写は、似せて作り上げるので模作ともいいます。全く同じものが描けたとしたら模造品ということになるのでしょうか。
・日本画で古くから用いられる伝統的な学習法
模写は、日本画で古くから用いられる伝統的な学習法になります。模写を繰り返しおこなうことは、デッサンなどの絵を描く練習にとてもいいとされています。
・古典作品の模写を「古典模写」と呼ぶ
日本画の模写の中でも古典作品の模写を「古典模写」と呼びます。日本画ではこの手法が伝統的な学習方法になります。
模写の種類は、大きく分けて3種類あり、普通模刻、写真模写、レプリカなどと呼ばれています。それらの違いについて詳しく見ていきましょう。
・普通模刻
普通模写は模写の中でも彫刻での模写ということになりますが、美術作品を忠実に再現することをいいます。本物そっくりに似せることをいいます。
例えば、漫画の場合、好きな漫画家などのタッチや動きなどを似せて描いていくことで、自分のスキルも上がっていきます。そこに自分のオリジナリティなどをプラスしていけば、自分の画力も上達していくでしょう。
・写真模写
普通模写と違い写真模写には、大きな違いがあります。普通模写には、その作家さんが描く線がありますが写真模写には線がありません。どこを線ととらえるのかは本人次第で、描く上でとても大切なポイントとなるでしょう。
・レプリカ(自分の作品を模写)
レプリカという場合は、一般的に模造品、複製品のことを指すことが多いようです。自分の作品を模写した場合は、オリジナル作品のバリエーションといい方になるかもしれません。
絵の描き方によって、デッサン、素描、ドローイングなどとさまざまな言葉で呼ばれています。
デッサンは、下絵のとき輪郭、質感、立体感などを大まかに捉えますが、デザインだけで完成させるときは、時間をかけて細かい部分まで正確に描きます。
どの描き方においても、ポイントを押さえてしっかりと練習を繰り返すことで、確実に上手になっていきます。
地道な努力が必要ですが、諦めなければそれが報われる時が必ず来ます。
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